【研究者が考察】理想的な洗顔料と洗顔方法をハックしよう!

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ミライ

どうも、ミライです。

洗顔が大事そうなのはわかるんだけど、どういう洗顔料が良いの?

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イケ女

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ミライ

スキンケアにおいて、洗顔は非常に大事。
洗顔料も大事ですが、洗顔方法はもっと重要です。

↓Contentsからお好きなところにとべますよ。

洗顔(洗浄)とは?

目的

皮膚を美しく、健やかに保つためには、
「洗顔、保湿・保護、紫外線対策」がカギとなります。

中でも洗顔は、そのファーストステップにあたります。
洗顔は、皮膚の様々な汚れを取り除き、清潔にする目的で使用されます。

一言で”汚れ”といっても、
実は種類があります。
詳細は後ほど記載します。

洗顔料の種類

洗顔の際に用いる”洗顔料”は、
時代とともに大きく変化してきました。

以下のコラムは、ちょっとしたネタなので、
不要な方は飛ばしてください。
飛ばしても内容の理解に支障はありません。

<コラム>

だいぶ遡りますが、
江戸時代まで小豆や米糠を袋に入れて使う洗粉が主流でした。
その後、明治時代になり西洋の化粧石けんが入手しやすくなり、
主流となりました。

そして、
1960 年代の界面化学の発展により、
さまざまな界面活性剤が開発され、
洗顔料は大きく変化しました。

さて、

洗顔料には、固形石けん、クリーム、
パウダー、ジェル、ポンプフォームなど、
様々なタイプの製品が開発されています。

ざっくりですが、
下記ポイントに留意しながら、
開発をしています。

・泡立ちのはやさ

・泡のキメ、弾力

・洗浄性力

・使い心地

・洗い上がり感(さっぱり、しっとり)

・安全性(刺激の有無等)

洗浄のメカニズム

肌(顔)に付着した汚れを取り除くためには、
その汚れが肌にくっついていたい力(付着エネルギー)以上の
洗浄力を外部から加える必要があります。

なので、極論を言えば、
水でもゴシゴシ洗えばある程度の汚れは落ちます

ただ、それでは肌にかなりの負担が
かかってしまう
こと、
また、表面的な汚れしか落とせません

そこで、洗顔料の出番です。

洗顔料に含まれる界面活性剤が
汚れや肌表面に吸着し、
ローリングアップ、乳化・可溶化によって
汚れが肌表面から離れていきます。

あなたの肌上にいるよりも、
界面活性剤と一緒にいる方が
居心地が良くなったということですね(笑)

ちなみに、
このメカニズムは洗顔料だけでなく、
ボディケア洗浄、ヘアケア洗浄料も同様です。

一部のクレンジングもこのメカニズムに該当します。

落としたいもの・落としたくないもの

さて、
上記で開発のポイントについて触れましたが、
洗顔料の開発はいわば「ジレンマとの戦い」と表現できます。

それは、洗顔により
「落としたいもの・落としたくないもの」
がそこにあるからです。

落としたいものを落とし、
落としたくないものはそのまま、
これを専門用語で「選択洗浄性」といいます。

文字に起こすのは簡単ですが、
実際に化粧品という様々な成分が
配合されている複雑系でコレを
実現するのは至難の業といえます。

処方開発者は私も含め、
洗顔料だけではありませんが、
日々格闘です(笑)

さて、前置きが少々長くなりましたが、
「落としたいもの」「落としたくないもの」の
代表格を見ていきましょう。

落としたいもの

✅汚れ

汚れの分け方も数通りありますが、
ここでは、内因性の汚れと外因性の汚れの
2種類ににわけています。

落としたくないもの

✅細胞間脂質(セラミド、コレステロール等)

角質細胞間の隙間を埋めている脂質で、
しばしば角質細胞はレンガ、
細胞間脂質はモルタルに例えられます。

外部からの刺激の侵入や体内の水分蒸散を抑える、
いわゆるバリア機能を司っています。

細胞間脂質と聞くと、
「セラミド」が頭に浮かぶ方が多いと思いますが、
脂肪酸・コレステロール類・糖セラミドなども
細胞間脂質の成分です。

これらの比率が崩れると、
バリア機能に悪影響を及ぼしてしまいます

セラミドだけが大事なのではなく、
細胞間脂質のバランスが保たれていること”が
重要なのです。

✅NMF(Natural Moisturizing Factor:天然保湿因子)

“エヌエムエフ”と呼ばれます。

角質層に約30%含まれていて、
水分を保持する重要な役割を果たしています。

NMFの約40%をセリンやアラニンといった
アミノ酸が占めており、
他にはピロリドンカルボン酸や尿素などがあります。

洗顔料の選び方

弱酸性


お肌が弱酸性だから、弱酸性が良いんでしょ?

そうですね、間違ってません。

正しい表現をすると、
健康な皮膚の皮脂膜のpHが4.5〜6.5の
弱酸性に保たれているのです。

ただ、弱酸性の洗顔料が好ましい理由は
コレだけではありません。

先ほど出てきました、
バリア機能のボスである細胞間脂質、
水分保持能をもつNMF。

これらは、残念なことに、
洗顔(洗浄)で洗い流されてしまいます

しかも、皮脂腺由来の脂質は比較的短時間で回復しますが、
NMFや細胞間脂質は回復に時間がかかります

これは、なんとかして流れにくくしなくては…

その解決策が、

弱酸性の洗顔料を使用する

ということなのです。

その理由は、下記データが教えてくれます。

これらのデータは、
洗浄料のpHの違いによって
NMFやセラミドがどれくらい流れてしまっているか
という結果を示しています。

どちらも弱酸性領域(pH6)
注目してください。

左側のデータの縦軸は、
“アミノ酸溶出量”となっていますね。

つまり、棒グラフが長いほど、
NMFが流れてしまっている、
逆に短いとNMFが流れていない、
残っていることを示すのです。

では、改めて弱酸性領域(pH6)を
見てみましょう。

棒グラフが最も短い、ですね。

つまり、

NMFは弱酸性の洗浄料であれば、
流れにくい

ということができます。

では、この感じで右側の
データも見ていきましょう。

ただし、このデータはさっきと逆に
見ないといけません。

どういうことか?

こちらのデータは、
セラミドの残留性を表しています。

よって、棒グラフが長いほど、
セラミドが洗い流されていない

ということですから、好条件となります。


そうなると、pH2が一番良いの?

って、声が聞こえてきそうですが、
pH2ってかなりの強酸です。

そんな洗浄料使ったら、
セラミドどころの話じゃなくなってしまいますね(笑)

ということを考えると、
やはり弱酸性領域(pH4〜6)が
妥当かと思います。

pH8も良い結果ではありますが、
この洗浄料を用いた場合、
一時的に皮脂膜のpHは高くなります。

私たちの肌には”アルカリ中和能”という
機能が備わっています。

この機能のおかげで、
アルカリ性に傾いてしまっても
しばらくすると弱酸性のお肌に戻ります。

ただし、それは健常肌の場合です。
敏感肌の場合は、数時間かかります

敏感肌の方は、
なるべく洗顔後も弱酸性の肌でいられるように、
洗顔料も弱酸性のものを
選ぶとよいでしょう。

肌にとって重要な細胞間脂質やNMFを
洗い流しにくくするために、
また、敏感肌ユーザーのことも考慮し、
弱酸性の洗顔料が推奨されている

これが、真意だと思います。

ステアリン酸グリセリル配合製品

私は成分で化粧品を語ることを
好ましく思いません。

なぜなら、
成分だけで化粧品を語ることは
できない
からです。

と、熱が入ってしまいそうなので、
本題に戻りますが(笑)

今回は、有用なデータがあること、
それにより確からしい推測が可能なので、
ご紹介致します。

それは、”ステアリン酸グリセリル”が
配合されている洗顔料です。

この成分は、油性成分と仲の良い、
ノニオン性界面活性剤です。

界面活性剤ではりますが、
ある種の刺激緩和作用もある、
(特許検索をすると、ヒットします)
クラシカルな成分ではありますが、
非常に優秀な成分の1つです。

Cosmetic-Infoで検索すると、
ステアリン酸グリセリルを配合した洗顔料が
237件ヒットしました。
(2020.3.8現在)

そこそこの件数ですね。
クレンジングも含めると、
約500件になります。

ちなみに、これは”化粧品のみ”の結果です。

医薬部外品表示名称は
「親油型モノステアリン酸グリセリル」になります。

さて、有用なデータを見てみましょう。


「食器用洗浄剤の皮膚への影響とモノグリセライド配合による皮膚刺激緩和作用について」より抜粋

上図は、洗浄料にステアリン酸グリセリル
(図では、モノグリセライドと表記)を
添加することにより、角層水分量の低下抑制、
およびセラミドの溶出抑制効果を示しています。

どちらのデータもモノグリセライド、
つまり、ステアリン酸グリセリル添加量が1%を
超えたあたりから効果が出ていることがわかります。

化粧品の場合、1%以上の成分は上位に記載されています。
目安として、かなり上位に記載かつ
植物エキスやコラーゲンといったPR成分よりも
上位にあれば、1%以上配合されているとみて良いと思います。

ただし、繰り返しになりますが、
これは化粧品にのみ使用可能な技です。

医薬部外品の場合、配合量に関わらず、
順不同となるためです。

美肌への分岐点!洗顔方法は超絶大事!!

流れの都合上、
一番最後になってしまいましたが、
いくら適切な洗顔料を選んだところで、
それを適切な方法で使用しなければ、
何の意味もありません

実際に、洗顔方法を変えただけで、
肌の調子が良くなった、
という方をこれまでに何人も見てきました

ここでは、適切な洗顔方法について考えていきます。
個人的にココが最もお伝えしたいポイントです。

水で素洗い→洗顔料→短時間ですすぐ

洗顔をすると、洗顔直後の皮膚(皮脂膜)のpHが
アルカリ性に傾いてしまいます。

NMFやセラミドの箇所でも出てきましたが、
健常肌の場合は、しばらくすると元に戻りますが、
敏感肌の場合は、数時間かかります

皮脂膜は皮膚表面を弱酸性(pH4.5 〜 6.5)にすることで、
細菌の増殖を抑制する効果があるため、
pHがアルカリ性に傾いたままでいると、
その効果が弱まることは容易に想像できます。

また、水分蒸散をコントロールできなくなります。

そこで、
洗顔前に水で素洗い
→よく泡立ててから洗顔料を使用
→短時間(このデータでは30秒)ですすぐ


上記を行うことで、
皮膚(皮脂膜)のpHは洗顔前の値に戻っています。
(赤い円で囲まれた箇所をご覧ください)

一方で、素洗いをせず、
泡だてが不十分な場合は、
洗顔前よりpHが高くなっています。

また、どのパターンの場合も
すすぎが不十分の場合(5秒が顕著)、
やはり洗顔前よりpHが高くなっています。

原因としては、すすぎが不十分なことによる、
界面活性剤の皮膚吸着が考えられます。

素洗い、泡だて、すすぎ
これらのどれが欠けてもいけないということですね。

そして、このデータにはありませんが、
ゴシゴシこすりすぎないこと
これもかなり重要です。

↓は私の経験によるツイートです。

よく泡立てる

既出ではありますが、
よく泡立てるメリットが他にもあります。

これは、花王社の研究成果ですが、
よく泡立てたきめ細かい泡は、
そうでない泡と比較して、
油の洗浄率が上がるのです。

↓花王HP
https://www.kao.com/jp/kaonokao/dna/1_3/

また、きめ細かい泡の方が、
泡弾力が高いため、肌への負担が軽くなります

まさに、一石二鳥ですね。

泡に関する話はまだ終わりではありませんよ。

下記は、同一の固形石鹸を用いて、
2種類の泡タイプA、Bで1週間朝晩洗顔をした
実使用テストの結果です。

簡単に言うと、

泡Aは泡だて十分、
泡Bは泡だて不十分

ということです。


「水性洗顔料の使用方法と肌への影響」より抜粋

冬の乾燥した時期の試験ということもあり、
季節の影響を含む軽度のつっぱり感を
20%のモニター者が感じたものの
両群で差はありませんでした。

一方、モデル泡 B 使用群にのみ
“赤み”、“痒み”、
“洗顔後に使用した化粧品がしみる”等の
刺激感を訴えたモニター者が
40%と多発してしまいました。

同じ固形石鹸を用いているにも関わらず、
このような差が生まれたということは、
泡立て不足による影響である、
と考えて良いと思います。

よく泡立てることがいかに大事か、
理解して頂けたかと思います。

泡立てるのが苦手な方は、
ネットを使ったり、
ポンプフォーマーを選ぶようにすると
良いと思います。

水でもある程度の汚れは落ちる

実は、汚れの種類にはよりますが、
水でもある程度は落ちます。

引用:角層中における過酸化脂質及び皮表脂質の分布と洗浄による除去(一部改変)

上記データは、
過酸化脂質(皮脂のスクアレン等の酸化物)の残存率を
示しています。

以下の説明では洗浄のお話のため、
「除去率」としています。

つまり、「除去率=100-残存率(上記データ)」
となります。

それでは、本題に戻ります。

最外層(一番左)の除去率は、
水洗いでは、52.4%に対し、
洗顔料使用では76.5%でした。

2層目はどうでしょうか。
水洗いでは33.3%、
洗顔料を用いると、57.11%除去という結果に。

つまり、

水洗いでも表面上の過酸化脂質であれば、
ある程度は取り除くことができる、
といえます。

ただし、角質層2層目の結果を見ると、
毛穴に入り込んでしまった過酸化脂質を
除去するには、
やはり洗顔料の出番
となりそうです。

次に、皮脂の除去率を見ていきましょう。


引用:角層中における過酸化脂質及び皮表脂質の分布と洗浄による除去(一部改変)

最外層の除去率は、
水洗いの場合40.7%、
洗顔料使用の場合は88.2%という結果でした。

皮脂の除去率は明らかに

水洗いより、洗顔料を用いた方が高いですね。

一方で、2層目以降はどちらも
ほとんど除去されませんでした。

皮脂はバリア機能に関与する成分である一方で、
紫外線などの影響により、
過酸化脂質に変化してしまいます。

なので、
落としすぎず、残しすぎず、ちょうど良くが理想、
だと考えられます。

いや、まぁ、言葉にするのは簡単なのですが、
このあたりは非常に難しい…

あなたにとってどの程度が最適か、
なんて誰にもわかりませんからね。

ミライからの洗顔法提案

これらの結果を踏まえた私の超個人的な意見で、
あくまでも“皮脂分泌の少ない方向け”ですが、

・朝は水またはぬるま湯洗顔
・夜は洗顔料使用

というのはいかがでしょうか。

特に、秋冬の皮脂分泌量は春や夏に比べると少ない
ので、朝は水洗いでも良いかと思います。

水洗いの方が洗顔料を用いた場合よりも
細胞間脂質やNMFといった、
肌に重要な成分が流れにくいことは
容易に想像ができます。

また、最近こんなおもしろいデータ出てきました。


「2020-03-19 ファンケル社ニュースリリース」より抜粋

朝の洗顔に洗顔料を使用しない人は、
使用する人と比較すると、
洗顔後の約 4 時間後に 2 倍近くの
「過酸化脂質」量を排出する、とのこと。

排出する、という表現がちょっとアレですが、
要するに、洗顔料を使用した方が皮脂除去率は高い
(先ほどのデータにもありましたね)

→朝洗顔に洗顔料を使用しない場合、
皮脂が残っている量が多くなる

→残った皮脂が日中に酸化

→結果、過酸化脂質量が多くなる

ってことかなと思います。

モニター者がどうのような方々であったか不明なので、
推測にはなりますが、
寝ている間に皮脂があまり分泌されていないのであれば、
無理して朝洗顔料で取り除くこともないわけですよね。

最初にも書きましたが、
提案方法は、あくまでも

“皮脂分泌の少ない方向け”

でしたね。

だから、結構皮脂多めかも、って方は、
朝も洗顔料を使えばイイし、
そうでなれば使わなくてもイイのかな、
と思うのです。

以前このブログを読んで頂いている方なら
ご存知かと思いますが、
上記のデータがリリースされる前から、
私はこの洗顔法を提案しています。

勿論、この考察が100%正しいとは言いきれませんが、
このデータのお陰で割とまともな提案ができているかな、
と感じました。

どう?スゴイでしょ??😁

…………

スミマセン、チョウシニノリマシタ🙄

とまぁ少々脱線しましたが、

季節や肌状態と相談しながら、
色々なパターンを試してみて、
あなたのベスト洗顔法をハックしましょう

まとめ

いかがでしたでしょうか。

洗顔により、不要な成分のみならず、
肌にとって重要な成分も取り除かれてしまうのが
リアルです。

ですが、

洗顔料の選び方、
洗顔の方法を少し変えてあげるだけで、
あなたの洗顔後の肌状態を良い方向に
導くことができます

私が最も主張したかった”洗顔方法”は、以下の通りです。

・水で素洗い

・よく泡だてる

・短時間ですすぐ

・ゴシゴシNG

どれもめちゃくちゃ簡単なことです。

「洗顔を制する者はスキンケアを制する」

この記事がスキンケアの
ファーストステップである、
「洗顔」について少しでも考える
きっかけになりましたら、泣いて喜びます😂

<参考文献>
・日本香粧品学会誌 Vol. 42, No. 4, pp. 270–279 (2018)
・日本香粧品学会誌 Vol. 42, No. 2, pp. 109–124 (2018)
・J. Soc. Cosmet. Chem. Jpn. 総 説 33 (2) 109-118 (1999)
・J. Soc. Cosmet. Chem. Jpn. 総 説 47 (2) 93-99 (2013)
・COSMETIC STAGE Vol.2, No.5 2008

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